研究概要 |
ラットの腸管にループを作製し、in situ一回かん流法により、ループ内を4%エタノール(EtOH)溶液でかん流を行った。 かん流前に各濃度のシアナマイド(CY)(25,50,100mg)で前処理すると、血中アセトアルデヒド(AcH)濃度は、CY投与量に比例して上昇した。これに対し、ピーク血中EtOH濃度と吸収速度定数は反比例的に有意に低下していった。すなわち、腸管からのEtoHの吸収は血中AcH濃度に依存して減少する知見をえた。一方、Colored microsphere法でループの組織血流量を測定したところ、CYで前処理しない群ではかん流時血流は軽度に増加したが、CYの前処理により著明に血量は減少した。しかし、この血流減少は血中AcH濃度上昇とは相関関係は認められなかった。これらの結果は血中AcH濃度の上昇によるEtOHの吸収抑制は吸収部位での血流減少が大きな要因の一つと考えられるが、血流以外の要因が存在することが示唆された。 また、血中AcH濃度の上昇によるEtOHの吸収抑制はEtOHに特異的な現象であるのかを検討するため、EtOHと同様に水溶性の低分子物質であるブタノンをEtOHとともにかん流したところ、EtOHとほぼ同様の抑制が認められた。このことからAcH濃度の上昇による吸収抑制はEtOHに特異的な現象ではないことが示唆された。 これまでアトロピン投与により腸管からの吸収抑制が阻害される知見を得ていることから、AcHによる吸収抑制は、AcHを介して自律神経系が関与している可能性が強く示唆されており、今後は神経系の関与について検討する予定である。
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