研究概要 |
陳旧骨髄からの性別判定法としてアメロゲニン遺伝子を用いたPCR法を検討した.剖検採取した胸骨柄22検体を外気中に2週間から18ケ月放置後骨髄からDNAを精製した.AMGLを指標として,プライマーAMXY-1F,AMXY-2Rを用いてPCRを行った.その結果22例中13例が1回のPCRで性別判定が可能であった.判定不能の9例につき,低分子物質除去後,BSAを添加しPCRを行ったが判定は不能であった.そこでこのPCRによる生成物をテンプレートとし,さらに2回目のPCRを行ったところ3例が性別判定が可能となった.判定不能となった原因としては,著しい低分子化,外来微生物由来と考えられる高分子DNAの存在によるものと考えられた.放置期間とPCR増幅との関係について検討したところ最長16ヶ月放置例まで判定可能であった.しかし2ヶ月放置例でも判定不能な例もあり明らかな相関は認められなかった.次に判定不能であった6例のうち3例が溺死であったことから海水とPCR増幅との関係を検討した.その結果海水そのものはPCR増幅を阻害する作用を有しているが,海水はDNA抽出の過程で除去できることが判明したため海水成分はPCR増幅に大きな阻害には成りえないと思われる.溺死症例で性別判定が不能となる理由は水中から陸上にあげると死体の腐敗が急速に進行し,DNAの低分子化ならびに微生物由来のDNAの混入などが起こるためと考える. アメロゲニンはXY両形質を個別に,同時判定できるという利点がある.骨髄からの判定においては低分子領域DNAの除去,BSAの添加,PCRを2回繰り返すなど検出感度をあげる必要がある.
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