研究概要 |
我々は、成熟ラットから心臓を摘出し、酵素で処理することにより単離心室心筋細胞を得、それを用いてin vitroでのパラコート投与時の細胞形態の変化を観察し、あわせて細胞障害のめやすとなる漏出物質の測定をした。使用する酵素の組み合わせも種々検討した。 培養液中に、パラコートを投与し、4、8、及び24時間後の培養細胞及び培養液を観察対象とした。パラコート濃度は、各種の文献より、0.1mMから1mMと設定した。パラコートを添加すると培養液のpHが変動するおそれがあるため、投与前に予めpHを7.4に調整したものを使用して影響をなくした。形態変化の観察には、位相差顕微鏡を用い、写真撮影を行った。 パラコート濃度が高いほど形態変化が大きく、また早かった。形態変化は、「細胞全体が収縮し矩形を呈する」というものであった。また,中にはブレブを呈するものや,横紋が消失するものもみられた。更に、細胞の膨化も一部でみられた。培養終了時の培養液の遠心上清を用いてCPKの測定をしたところ、パラコートの濃度が高いほどCPKも高濃度に検出され、濃度依存的であった。 パラコートの投与が、心筋細胞に対して障害性に働くらしいことが示唆されたが、その機序はパラコートの直接作用の他、フリーラジカルを介する機構が考えられよう。培養液中の酸素濃度を低くしてフリーラジカルが生じにくくしておいたり、スカベンジャー(ビタミンCやE、グルタチオンなど)をあらかじめ投与して発生を抑えたりして同様の変化が観察されるかどうかをみる必要がある。また、パラコートの濃度もより幅広く設定して、有意な変化を生じる濃度を探るとともに、時間的な変化も、よりはやい時点から観察すべきであろう。 さらに、変化が遺伝子レベルで起きていないかを知るべく、まずアポトーシスに着目し、DNAの断片化の有無を電気泳動でのラダーの検出で調べることとする。
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