研究概要 |
我々は、成熟ラットから心臓を摘出し、酵素で処理することにより単離心室心筋細胞を得、それを用いてin vitroでのパラコート投与時の細胞形態の変化を観察し、あわせて細胞障害のめやすとなる漏出物質の測定をした。使用する酵素の組み合わせや細胞単離条件についても種々検討した。その結果、パラコートの投与が、心筋細胞に対して障害性に働くらしいことが示唆された。 培養液中に、パラコートを投与し、2及び18時間後の培養細胞及び培養液を観察対象とした。パラコート濃度は、各種の文献より、0.01mMから1mMまで種々のものを設定した。パラコートを添加した培養液はpHが変動しているおそれがあるため、投与前に予めpHが7.4であることを確認して使用した。形態変化の観察には、位相差顕微鏡を用い、写真撮影を行った。 パラコート濃度が高い場合の細胞形態の変化は「細胞全体が収縮し矩形を呈する」というものであった。また,中にはブレブを呈するものや,横紋が消失するものもみられた。更に、細胞の膨化も一部でみられた。こういった細胞の変化は低酸素状態に暴露した場合等に類似していた。この一見死滅したかに見える細胞をトリパンブルーで染色してみると、すべてが染まるわけではなく、形態変化後もなお生存しているとみられるものもあった。一方、死滅した細胞は培養皿に付着できずに浮遊するものが多かった。 次に、培養終了時の培養液の遠心上清を用いてCPKの測定をしたところ、18時間後では、パラコートの濃度が0.1mMを越えるとCPKも高濃度となる傾向があった。また、2時間後では差は殆どみられなかった。さらにアポトーシスの関与を疑い、DNAを抽出し電気泳動を行ったが、特徴的なラダーは認められなかった。
|