本研究は、アルコールについてのポピュレーション・ファーマコキネティクスの検討とアルコールと薬物との相互作用の検討を目的として行われた。アルコール代謝は、飲酒量が体の酵素系の処理能をはるかに越えているため、非線形薬物速度論に従うが、数学的処理が難解であるため研究は困難な点が多い。薬物動態学的解析法自体の妥当性も手探り状態である。ポピュレーション・ファーマコキネティクス方法論的検討を行い、続いて、アルコールと薬物との相互作用の検討として、アルデヒド脱水素酵素阻害剤によるアセトアルデヒド蓄積のアルコール消失への影響を調べた。 家兎を使い、アルコールを静脈投与し、血中アルコール消失曲線を得た。その際、アルコール投与量を0.25g/kgBWから3.0g/kgBWまで変え、投与量ごとの消失動態を調べた。アルコール及びアセトアルデヒドの定量にはガスクロマトグラフィーを使用した。動態モデルとしてはミカエリス・メンテン型消失モデルを使った。 その結果、血中アルコール消失曲線1本からの動態解析ではVmax値とKm値との相関が報告されていたが、厳密には方法論的誤りであるとの結果を得た。また、アルデヒド脱水素酵素阻害剤投与により、アルコール消失の遅延を認めた。薬物動態学的解析では、Vmax値が低下し、Km値は変化しない、いわゆる非拮抗阻害様の阻害であった。この結果は、薬物相互作用の典型的変化といえ、意義深い。即ち、ヒトにおいて、一部のアルデヒド脱水素酵素活性の低い人がいることが知られており、その人たちのアルコールの薬物動態特性を知る上で大いに役立つ結果と考えられる。
|