研究課題/領域番号 |
07670507
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
藤倉 隆 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (60008323)
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研究分担者 |
浜島 誠 藤田保健衛生大学, 医学部, 助手 (20189608)
平田 ゆかり 藤田保健衛生大学, 医学部, 助手 (50156676)
滝澤 久夫 富山医科歯科大学, 医学部, 教授 (90171579)
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キーワード | 法医学 / 中枢神経系 / 損傷検査 / 循環障害 / 血管造影法 / くも膜下出血 |
研究概要 |
法に触れる多くの傷害事件や複雑な交通事故を扱う法医学の領域では外力によって惹きおこされた脳損傷を調べるに当たり、その損傷の部位・広がり・程度・新旧の別などを的確につかみ、損傷の形態とその位置から考えて、損傷の成り立ちを外力との関連において捕らえながら鑑定していくことが要求される。しかし、脳は堅い骨組織に包まれているために、外力によって複数の部位に多彩な変化を生じやすく、また複雑な立体的構造を示す損傷が多いという特性を有している。したがって、脳損傷の検索には単に外表および組織のスライスによる観察では不十分であり、いろいろな角度からみた検討が必要である。 私たちはこれらの問題を解決するために、従来行われてきた脳の肉眼的・組織学的観察に加えて剖検例の血管造影を行って脳損傷の検索を進めてきた。例えば、頭部損傷に合併することの多い「くも膜下出血」は、脳脊髄液のためにびまん性に広がりやすく、これまでびまん性に広がった「(外傷性)くも膜下出血」の出血源を確認することは不可能であるとされてきた。もしも、その出血源を絞り込むことができれば、その成因や損傷と加わった外力との相関を考えることができるので、平成8年度は法医鑑定例に血管造影法を応用して「くも膜下出血」の出血源を絞り混み、その成立機序を明らかにしようとした。 司法解剖例119例について、その開頭前に左右の総頚動脈からバリウムを主剤とする造影剤を注入し、開頭の前後、及び脳の全体やスライスについてX線写真をとり検討した結果「くも膜下出血」の原型とも言うべき微小な病変を検出し得たし、また広範な「くも膜下出血」を示してその出血源の確認が難しかった例でも、造影剤の漏出によりその出血源を絞り込むことができ。損傷の成り立ちの解析に新しい展開を示した。これらは新しい知見であり、国際法科学会総会(1996 東京)に報告することができた。
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