研究概要 |
血液,尿,胃内容を検体として有機溶媒抽出法,固相抽出法で抽出した試料をサーモスプレイ質量分析計に直接導入してマススペクトルを調べた.薬物を含まない検体からもm/z200以下に検体成分由来のイオンが多く検出され,分子量200以下の薬物の分析は困難であったが,それ以上の物質は検出が可能であった.服用した薬物の検出には,高濃度に含まれる可能性が高い胃内容が検体として最適と考えられる.その際の前処理として胃内容と等量の蒸留水,エチルアルコール,またはアセトニトリルを混合し,その遠心上清を検体として有機溶媒抽出したところ,薬物を含まない対照試験では蒸留水で処理した場合が一番夾雑物が少なく,次いで無処置検体となり,エチルアルコールやアセトニトリル処理は不適切であった.さらにベンゾジアゼピンなど8種類の薬物を胃内容に添加した検体(最終濃度1または5μg/ml)を用いて検討したところ,等量の蒸留水で前処理した場合は1μg/mlの検体からも薬物は検出されたが,無処置時には5μg/mlの検体からしか検出できなかった.この差は夾雑物質の存在が大きく関与している可能性が考えられた.そこで質量計への導入経路にセップパックC18を充填した導管(1/16inch×1.0mm×20cm)を接続して検討したところ,無処置の胃内容(1μg/ml)からも検出することが可能となった.また各薬物のベースイオンのマスクロマトグラムを比較したところ,約1分程度ですべての薬物が溶出し終わるが,各薬物の保持時間にわずかながら差が見出され,同定の際に有用であった.今回の方法では直接質量分析計に導入するために他成分が混在しやすく,目的物質のマスナンバーと同じ成分が混在する可能性が高いため定量は信頼性に欠ける.分析結果をより正確に出すためにはガスクロマトグラフ質量分析計やトライエージなどの乱用薬物スクリーニングキットの併用が有効であった。
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