研究概要 |
Werner症候群は遺伝性の早老症であり、動脈硬化症の著しい促進が見られる。この動脈硬化の成因に関しては遺伝子異常に起因した特別な動脈硬化の危険因子のあることが推測される。動脈硬化の成立にはマクロファージ、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞などの細胞が重要な役割を果たしており、現在これらの細胞の機能異常の面からの動脈硬化の成立と進展の機構が捉え直されてきている。Werner症候群の皮膚線維芽細胞においては細胞外マトリックスの遺伝子とともにsequenceの一部にscavenger receptorとhomologousな配列を含む未知の遺伝子WS9-14やplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)など動脈硬化の促進に働く可能性のある遺伝子が過剰発現していることが明らかになった.われわれはまず本症候群の培養皮膚線維芽細胞における変性LDLの取り込みの促進について検討したが,とくにacetylated LDLのbindingが亢進している事実は認められなかった.つぎに線維芽細胞において過剰発現のみられるPAI-1の血中濃度を検討したところ,測定した全ての症例にて高値が認められた.これは線溶系の低下による動脈硬化の促進の可能性を示唆した.血管内皮細胞の表面ではintercelular adhesion molecule-1(ICAM-1)、vascular cell adhesion molecule-1などの接着因子が発現して単球やマクロファージの内皮下への侵入を仲介する.最近これらの接着因子は血中にてsoluble formとして測定できる.われわれはこと接着因子についても単球やマクロファージの侵入を介した動脈硬化促進機序が存在する可能性を考え、血中濃度を測定した.その結果ICAM-1が本症候群患者の血中にて増加していることを見い出した.
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