研究概要 |
戻し交配を12回行うことで、CBA/K1Jms-lpr^<cg>/lpr^<cg>からMRL/MpJへのlpr^<cg>遺伝子導入を行い,コンジェニック化されたMRL/MpJ-lpr^<cg>(MRL-lpr^<cg>)を作出した.MRL背景遺伝子上にlpr^<cg>がホモ接合で入ると優れた自己免疫のモデルになることは,以前にも示した.このMRL-lpr^<cg>新生児マウスをFM母親マウスに哺乳させて,スーパー抗原の活性を有し,マウス乳癌ウイルスであるMMTV(FM)の感染系を作ったが(MRL-lpr^<cg>fFM),これが妥当であることは,MMTVgp52を乳汁中に分泌していることで確認された.初めに寿命の検討をしたが,MRL-lpr^<cg>では180±10日であったのに対して、MRL-lpr^<cg>fFMでは226±15日で延長が見られた.そのメカニズム解明のために皮下,内部,腸管膜リンパ節の重量を測定したが,それぞれにつき,3カ月齢の雄雌,5カ月齢の雄雌のいづれにおいてもMRL-lpr^<cg>fFMでは減少が見られ,中には約2分の1程度のものも見られた.腫脹リンパ節細胞の検索ではVβ8.2,Vβ14細胞が特異的に減少しており,殆ど期待通りの系であることが確認された.尿蛋白をスコアーで見ると,5カ月齢雄の場合,MRL-lpr^<cg>では2.41±0.26,MRL-lpr^<cg>fFMでは1.67±0.16,雌の場合MRL-lpr^<cg>では2.63±0.24,MRL-lpr^<cg>fFMでは2.08±0.27といづれの場合にも尿蛋白減少効果が見られた.このことから,自己免疫に重要なVβ8.2細胞を減少・欠失させて糸球体腎炎を軽減させ,寿命の延長をきたした可能性が示された.現在,免疫複合体型糸球体腎炎を軽減させたか否かの検討のため,H-E染色,電子顕微鏡標本,IgGやC3の沈着を見るための免疫染色などでの検討を進めている.また,抗核抗体,抗DNA抗体,抗ガンマグロブリン血症,免疫複合体増量などの血清学的異常が改善されるか否かの検討も行っている.
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