研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)の遺伝要因としてのTAP遺伝子の意義を検討した。又、DR、C4等、既知の遺伝要因とTAP遺伝子の関連を検討するとともに遺伝要因と自己抗体を含む臨床所見との関連を検討した。92症例を対象とし、対照として正常人95名を用いた。HLAは血清学的、及びDNA typing、補体C4は血清学的方法で検討した。TAP遺伝子は、PCR-RELP法用で検討した。制限酵素としてTAP1についてはSau3AI、AccIを用い、TAP2についてはBfaI,AccII、MspI、RsaIを用いた。臨床データーとしては家族歴、RA因子(RAF)、発症年齢、自己抗体等について検討した。RAではTAP2B(66.3% Vs 60.0%)、2C(32.6% Vs 23.2%) の増加がみられたが、有意ではなかった。RAではTAP2Eが有意に減少していた(6.5% Vs 18.9% p<0.05)。TAPとDRとの相関では、TAP1BとDR9(p<0.05)、TAP2AとDR15(p<0.005)、TAP2BとDR8(p<0.0005)、TAP2EとDR9(p<0.001)の有意な相関を認めた。相関からは、TAP2B、2Cの増加はDRB1*0405の増加に伴う二次的なものと考えられたが、TAP2EはDRB1*0405との相関はなかった。この事からTAP2EがRAにprotectiveに働くgeneのマーカーとして働いている可能性も考えられた。TAPと臨床所見との関連では、TAP2Bと抗SS-A抗体との有意な相関を認めた(p<0.05)。SLEの一例にTAP2の新しいRsaIパターンを示すalleleがみつかった。DNA配列から、ATATA→ATGTAと48723位の塩基置換が認められ、TAP2JTと名付けた。 Wordsworth等はTAP2Dの増加を報告しているが日本人では、元来alleleの頻度が低いためか増加を認めなかった。又、Singal等は、TAPとDRがともにRAに関与している可能性を示唆している。我々の検討ではDRB1*0405、TAP2B、TAP2Cの相対危険率は各々2.5、1.3、1.6でありDRB1*0405とTAP2B又はTAP2Cをともに示すRRは2.3と2.8であった。この結果からは、日本人でTAPが相関(相乗)的に関与している可能性は低いと考えられる。
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