研究概要 |
PSS及びSLEの遺伝要因としてのTAP遺伝子の意義を検討した。又、DR、C4等、既知の遺伝要因とTAP遺伝子の関連を検討するとともに遺伝要因と自己抗体を含む臨床所見との関連を検討した。PSS患者は55名、SLE患者は52名を対象とし、対照として正常人95名を用いた。HLAは血清学的、及びDNA typing、補体C4は血清学的方法で検討した。TAP遺伝子は、PCR-RFLP法用で検討した。制限酵素としてTAP1についてはSau3AI、AccIを用い、TAP2についてはBfaI、AccII、MspI、RsaIを用いた。臨床データーとしては家族歴、病型、発症年齢、自己抗体、肺繊維症の有無等について検討した。Diffuse scleroderma (DS)ではTAP1A(100% Vs 85.3%)、2A(80.0% Vs 42.6%)のallele frequency(AF)の有意な増加がみられた。a-Scl-70群でTAP1A(93.2%)、TAP2A(63.6%)は増加していた。又、TAP1Bは有意に減少し、TAP2BもDSで有意に減少していた。TAPとDRとの相関では、TAP2AとDR15(p<0.005)、DRB1*1502(p<0.005)の有意な相関を認めた。相関からは、DS,a-Scl-70群でのTAP1A、2Aの増加はDRB1*1502の増加に伴う二次的なものと考えられた。TAPと肺繊維症を含めた臨床所見との関連では、有意な相関を認めなかった。SLEでは、いずれのTAP1 alleleのphenotype frequencyも差がなく、TAP2Hが増加傾向を示した(5.8%)。SLEで相関が報告されているDRB1*1501は、TAP1,TAP2のいずれのalleleとも相関を示さなかった。SLEの自己抗体の有無とTAP alleleの関連では、RNP群でTAP2Hが11.8%と増加傾向を示したが有意ではなかった。白人でもいくつかのalleleと自己抗原の弱い相関が推定されているが、いずれも日本人SLEでは証明されず、結論としてはTAPと自己抗体の関連はないと考えられる。又、オッズ比の検討からは、日本人でTAPが相加(相乗)的に関与している可能性も低いと考えられる。前回見つかったTAPJTは、SLE1名に認められただけでPSSには認められなかった。
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