1.研究の目的 気道の過敏性は、自律神経支配以外に肺・気道を構築している気道平滑筋、気道上皮マクロファージ、マスト細胞・好酸球・リンパ球などの細胞レベルで決定されている可能性がある。そこで気道過敏性の高いA/Jマウスと低いC3Hマウスの間でキメラマウスを作製し、キメラ状態になっている肺気道の過敏性を測定し、上述の仮説を検証するこの研究は将来、肺移植に際してdonorの肺気道の過敏性が選択因子となるかどうか判断基準を与えると期待される。 2.方法 気道過敏性の測定は、マウス専用の気道過敏性測定装置を作製し、メサコリン吸入に対する気道の反応性をKonzett Rossler法により測定した。メサコリン吸入により起こる気道閉塞が生み出す空気のoverflowが出現するまでのメサコリン吸入量を過敏性の指標とした。気道過敏性の高いA/Jマウスと低いC3H/Heマウスのメスからそれぞれ受精卵を採取し、混合培養して8細胞期目にPHAを加えて受精卵を融合させた。融合卵の偽妊娠状態のICRメスマウスの子宮内に注入し着床させた。 3.結果と考察 (1)A/J、DBA/2、C57BL6、C3H/Heマウスのメサコリンに対する気道過敏性は、A/JとDBA/2マスイが高く、C57BL6とC3H/Heが低いことが判明した。 (2)A/JとC3H/Heのキメラマウスは、3回の実験を試みたが1匹しか生まれなかった。このA/J←→C3Hキメラマウスの気道過敏性は、A/JとC3Hの間の値を示した。A/JとC3Hを交配して生まれたF1は、常染色体劣性遺伝により気道の過敏性は低いことが知られているが、キメラ状態では過敏性は中間を示すことが分かった。キメラ状態となっていると予想される肺移植患者の気道過敏性を考える上で参考となる結果である。
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