Nucleobindinの生理活性および性質に関して以下のような進展が見られた。 1.自己免疫疾患の遺伝子的素因のない正常の動物であるBALB/cマウスに、組み換え(r)Nucを投与することにより、抗DNA抗体産生をはじめとする自己抗体の産生が誘導された。 2.全身性エリテマトーデスの動物モデルであるMRL/lpr、C3H/gld、雄BXSBなどのマウスのリンパ組織において、nucleobindin mRNAの発現の亢進していることが観察された。 3.ループスモデルマウスにおけるnucleobindinの産生亢進は、抗Nucペプチド抗体を用いた免疫組織化学的検討により、蛋白質のレベルでも確認できた。 4.ヒト悪性リンパ腫細胞株Molt4の核抽出液より、抗ヒトNucモノクローナル抗体を用いて、天然のnucleobindinを免疫沈降させることに成功した。 5.中央に26個のランダムな塩基配列を含むオリゴヌクレチドを合成し、ヒトrNucとの結合性を検討し、親和性の強いものを選んでその塩基配列を調べた。その結果、Nucと結合しないヌクレオチドと比較して、有意に高頻度に認められるいくつかのモチーフがみつかった。たとえばその内の CCACCACAATA というモチーフや GTGTGGA というモチーフはIL-2遺伝子の上流域にも存在することが判明した。今後、Nucが種々の遺伝子の発現調節にどのように関わっているのか、機能的な面の研究を進める必要がある。
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