研究概要 |
1.炎症修復研究の対象として、ヒト脳動脈を選び、Willis氏環を主体として中心部分と末梢部に分けて各年齢別に脳動脈を収拾した。脂肪除去に続き、蛋白分解を繰り返して、多糖成分をDowexカラム、透析により精製ムコ多糖を得た。これを高分子状態で、電気泳動を下記の特殊酵素で分解前後対比した。ついで、高速液体カラムクロマトグラフィー(HPLC)でムコ多糖を構成二糖レベルで分析した。こうして炎症、修復過程における、ムコ多糖分子種分析を行い、かつ、その総括を行った。 2.電気泳動による同定: 高分子ムコ多糖分離のためピリジン・ぎ酸、酢酸カルシウム、酢酸バリウム・バッファーを用いた。この電気泳動をヘパリチナーゼ、ヘパリナーゼを用いて酵素分解前・後での高分子ムコ多糖分子種をセルローズ膜上で同定した。 3.構成二糖レベルでの検討:ヘパリチナーゼ゙、ヘパリナーゼを用い、ムコ多糖を構成二種に画一分解した。開発したHPLCにり溶出パターンを検討し、ヘパラン硫酸異性体について、それぞれの異性体を8種のムコ多糖分子種として分別定量した。コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸との関連を検討した。 4.中心Willis氏環、末梢脳動脈部分のマトリックス構成成分を比較検討した。HPLCでは分離効率は高度であった。アセトニトリル、メタノール、ピリジン・ぎ酸を69:10:21の溶出バッファー最適条件を検討し、これを使用した。中心部が末梢部に比べNSが多く、OSの含有比が少ないことが判った。カラム溶出塩濃度は、その増加とともにOSに比べ(2,N)S,(6,N)S,(2,6,N)Sの含有比が増加した。生理的に脳動脈小血管内での血液凝固能はこの硫酸比に比例して作用すると推定された。
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