研究概要 |
ATL患者より樹立したATL細胞株(SF-HT細胞)より、cDNAライブラリーを作成した。SF-HT細胞、CD4陽性T細胞およびMOLT-4細胞からそれぞれmRNAを抽出し、cDNAプローブを作成し、上記のライブラリーからSF-HT細胞にのみ発現が増強しているクローンを約150単離した。このなかで増殖に関与している可能性のある新しい遺伝子(SFA-1,-2)を解析した。 1.SFA-1の解析(J.Virol.in press) SFA-1は、1.6kbのmRNA,253個のアミノ酸からなり、構造はCD9などのTransmembrane 4 superfamilyに属する。SFA-1は種々の細胞に広く発現されているが、リンパ系細胞での発現は弱く、ATL細胞にて発現は増強し、これはtaxによって誘導される。機能を解析するためにSFA-1をNIH3T3細胞に発現させ、これを免疫原として2種類のモノクローナル抗体を得た。このうち一種類がMT-2,-4のATL細胞の増殖を促進させることが判明した。 2.SFA-2の解析(投稿中。1995年度分子生物学会総会およびウイルス学会総会にて発表) SFA-2は、0.9kbのmRNA,125個のアミノ酸からなり、構造はbZIP構造を持つ転写因子である。SFA-2は成熟リンパ球に特異的に発現しており、taxによって誘導される。SFA-2はhomodimerは形成しないが、c-Junとheterodimerを形成した。SFA-2/c-JunはAP-1およびCRE領域と結合した。現在、SFA-2/c-Junがどのような遺伝子を活性化させるか検討している。 3.その他種々の既知の遺伝子も単離されてきており、これらとATLとの関連について検討している。
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