研究概要 |
インテグリンを介したシグナル伝達に着目して、全身性エリテマトーデス(SLE),慢性関節リウマチ(RA)の末梢血および滑膜において解析を行った。活動期SLE末梢血Tには、β2インテグリンが強く発現され、さらに血管炎を合併した症例では、α4β1インテグリンの発現増強が伴っていた。β2,α4β1両者の発現が高まった血管炎合併SLEのシグナル伝達機構を調べたところ、チロシンキナーゼpp125FAKのチロシンリン酸化が亢進し、しかも蛋白レベルでの発現が増強していることが明かとなった。 共焦点レーザー顕微鏡を用いた免疫組織染色法によって滑膜組織での接着分子、シグナル伝達分子の発現を検討した。RA滑膜においても、コントロールの変形性関節症に比べ、インテグリンおよびそのリガンドが強く発現されていた。さらに、これら分子の発現増強が見られる血管周囲から表層下にかけて、非常に強いpp125FAKの発現が確認された。抗チロシンリン酸化抗体との二重染色で、pp125FAKに強いチロシンリン酸化が起こっていることが明かとなった。in vitroの実験系を用いてどの細胞群に、pp125FAKの発現が見られるか解析したところ、A型マクロファージ様滑膜細胞、およびB型繊維芽細胞に検出された。マクロファージ系細胞での発現は低いものと予想していたが、発現のレベルはA型細胞に数倍強いことが明かとなった。この細胞を抗インテグリン抗体で架橋し刺激を加え、細胞ライゼ-トからpp125FAKを免疫沈降して、そのチロシンリン酸化、蛋白発現を検討した。この実験系によって、A型マクロファージ様滑膜細胞では、インテグリンからのシグナルによってpp125FAKのチロシンリン酸化が強く引き起こされ、蛋白発現を増強していることが確認された。
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