研究概要 |
【目的】慢性関節リウマチ(RA)患者にはカルシウム依存性中性プロテアーゼ(カルパイン)の特異的阻害蛋白であるカルパスタチンに対する自己抗体が見いだされる。カルパインはプロテオグリカン分解や炎症の惹起に関与する中性プロテアーゼの1つと考えられており,その阻害蛋白カルパスタチンに対する自己抗体の産生はRAの病因・病態と関連する可能性が示唆される。本年度は抗カルパスタチン抗体が認識するエピトープの解析とその臨床的意義の検討を目的とした。 【方法】1)ヒトカルパスタチンのC末端178アミノ酸をコードする部分cDNA(RA-6)を制限酵素処理後pEX-DNAに組み込み,epitope libraryを作成した。2)患者血清およびマウスモノクローナル抗体を用いたクロニ-ブロット法でlibraryをスクリーニングした。3)陽性クローンよりプラスミドDNAを精製し,インサートcDNAの塩基配列を決定した。4)陽性クローンより発現させた融合蛋白を用い,免疫ブロット法で抗カルパスタチン抗体陽性RA血清との反応性を検討した。 【結果】1)患者血清はRA-6発現産物C末端のC1エピトープ(aa.152〜178)とN末端のC2エピトープ(aa.1〜114)を認識したが,モノクローナル抗体が認識するB2エピトープ(aa.77〜130)とは反応しなかった。2)抗カルパスタチン抗体陽性RA血清は15例中10例(67%)がC1と反応した。C1反応性を認めたRA例は非反応例に比してStage2以上の進行例が有意に多かった。3)B2とイ-スト90kDa熱ショック蛋白およびヒトTGF-β受容体,またC1とヒストンH2Aおよびヒトβ_2-glycoproteinIとの間に分子相同性を認めた。 【結論】RA患者における抗カルパスタチン自己抗体は,抗原を免疫して得られる抗体とは異なるエピトープを認識しており,エピトープ反応性がRAの病態と関連する可能性が示唆された。
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