研究概要 |
【目的】慢性関節リウマチ(RA)患者血清中に見いだされたカルシウム依存性中性プロテアーゼ(カルパイン)の阻害蛋白であるカルパスタチン(CS)に対する自己抗体の病因的意義の追求を目的とした. 【方法】1)ヒトCSをコードするcDNA(RA-6)より大腸菌に発現させた融合蛋白を用い,免疫ブロット法で活動性RA患者9例の血清および関節液中の抗CS抗体を検討した。2)家兎骨格筋カルパインの蛋白分解活性をカゼインを基質として測定した。ここに,精製RA-6融合蛋白または加熱HeLa細胞抽出物より部分精製したヒトCSを加え,抗CS抗体陽性患者IgG存在下および非存在下でのカルパイン阻害活性を検討した。 【結果】1)同一RA患者より採取した血清および関節液を免疫ブロットで検討したところ,抗CS抗体が血清で陽性であれば,関節液中にも同抗体が検出された。2)精製RA-6融合蛋白およびHeLa細胞CSは用量依存的に家兎m-カルパインのカゼイン分解活性を抑制した。ここでCSをあらかじめ抗CS抗体陽性患者IgGと反応させておくと,カルパインの蛋白分解活性が用量依存的に回復し,5mg/mlのIgG濃度でRA-6融合蛋白に対しては最大40-75%まで(RA 3,SLE 1例),HeLa細胞ヒトCSに対しては最大39-73%まで(RA 2,SLE 1例),カルパイン活性の回復が認められた。しかし,健常人IgGではかかるカルパイン活性の回復は認められなかった。1例のSLE患者血清は免疫ブロットで強い反応を示したにも関わらず,CS活性に対する抑制が認められなかった。 【結論】カルパインはRAの関節破壊に関与する中性プロテアーゼの1種と考えられており,抗CS抗体はRAの関節組織でのカルパイン活性増強を通じてRAの病因・病態に関与する可能性が示唆された。
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