研究概要 |
我々は,慢性関節リウマチ(RA)を中心とするリウマチ疾患患者に,カルシウム依存性中性プロテアーゼ(カルパイン)の特異的阻害蛋白であるカルパスタチン(CS)に対する自己抗体を見いだした.カルパインはプロテオグリカン分解や炎症の惹起に関与する中性プロテアーゼの1つと考えられており,その阻害蛋白CSに対する自己抗体の産生はRAの病因・病態と関連する可能性が示唆される.本研究では,1)抗CS抗体の臨床的意義,2)抗CS抗体が認識するエピトープの解析,3)抗CS抗体の病因的意義の検討を目的とした. 1) ヒトCSのC末端178アミノ酸をコードする部分cDNA(RA-6)より大腸菌に発現させた融合蛋白を抗原とする免疫ブロット法により,抗CS抗体はRA57%,SLE27%,強皮症38%,筋炎24%に検出され,RAにおける陽性率は有意に高頻度であった. 2) RA-6 cDNAを制限酵素処理後pEX-DNAに組み込みepitope libraryを作成し,患者血清およびマウスモノクローナル抗体が認識するエピトープを解析した.患者血清はRA-6発現産物C末端のClエピトープ(as.152〜178)とN末端のC2エピトープ(as.1〜76)を認識したが,モノクロナール抗体が認識するB2エピトープ(aa.77〜130)とは反応しなかった.Cl反応性RA例は非反応例に比してStage2以上の通行例が有意に多かった. 3) 同一RA患者より採取した血清および関節液を免疫ブロットで検討したところ,抗CS抗体が血清で陽性であれば,関節液中にも同抗体が検出された.抗CS抗体陽性患者IgGはCSのカルパイン阻害活性を用量依存的に抑制し,カルパインの蛋白分解活性を回復させた.しかし,健常人IgGではかかるカルパイン活性の回復は認められなかった.カルパインはRAの関節破壊に関与する中性プロテアーゼの1種と考えられるため,抗CS抗体はRAの関節組織でのカルパイン活性増強を通じてRAの病因・病態に関与する可能性が示唆された.
|