抗カルジオリピン抗体(ACA)がトロンボモジュリン(TM)に反応すれば、TMの機能が抑制され血栓症が生じるとの推測に基き、以下の実験を行い結果を出した。1)NZB/W F1より得られたマウス・モノクローナル抗カルジオリピン抗体(MoACA)の結果:18クローンのうち、5クローンがTMに反応した。またTMによって吸収された。MoACAはDNA、Histone、IgG-Fcなどとpolyreactivityを示した。MoACAのTMに対する反応はトロンビンによって抑制された。TMのトロンビンの結合部位であるepidermal growth factor(EGF)-domain 5(EGF5)の19のアミノ酸よりなる合成ペプチドにMoACAが反応した。カルジオリピン(CL)、TMに対するaffinity(Kd)は、CLは10^<-4>〜10^<-5>mol/Lであったが、TMに対しては10^<-8>〜10^<-9>mol/Lであった。2)ヒト抗リン脂質抗体症候群患者の結果:患者IgGを精製し、同様にTMの反応をみたが、検索した範囲内のIgGにはTMに対する反応は認めなかった。3)強皮症患者の結果:強皮症で40症例中9症例(22.5%)が抗TM抗体が陽性であった。この抗体は抗カルジオリピン抗体活性は示さないが、NZB/W F1マウス・モノクローナル抗体と同様にTMのEGF5部分に反応し、しかもprotein C活性を抑制した。また、ほとんどの抗TM抗体陽性症例では小動脈の血栓形成による指尖潰瘍を認めた。4)MRL/Iprマウスの結果:ヒトのモノクローナル抗TM抗体はマウスTMに反応しないことがわかり、マウスTMを精製し、MRL/Iprマウスの抗TM抗体を検索したところ、5カ月齢にて抗TM抗体が検出された。現在、抗ラットTM抗体をラットに投与することによって血栓形成を検索している。 現時点の結論は、ヒトの抗リン脂質抗体症候群では抗TM抗体は検出されなかったが、強皮症患者に検出され血栓形成との関連性が示唆されたため、抗リン脂質抗体が検出されない血栓症の症例において、抗TM抗体が重要であると考えられた。
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