研究概要 |
ヒト血清中の抗カルジオリピン抗体(aCL)はheterogenityを示し、様々な抗原に反応するpolyreactivity, polyspecificityを示す。aCLの血栓形成の病因性を検討するためNew Zealad black x white F1マウスから得られたモノクローナル抗カルジオリピン抗体(MoaCL)を使用し、トロンビンの受容体の一つであるトロンボモジュリン(TM)に対する反応性を検索した。ELISAによる検索によって、MoaCL 18クローン中、4クローンがTMに反応した。この4クローンはTMのepidermal growth factor様物質に位置するトロンビン結合部位の合成ペプチドにも反応した。MoaCLのTMに対する反応はウシ・トロンビンによって阻害された。MoaCLのトロンビンに対する親和性(Kd)は4.8×10^<-9>から4.7×10^<-8>Mを示したが、カルジオリピン(CL)に対する親和性は8.3×10^<-6>から7.4×10^<-5>と低かった。このように、これらのMoaCL4クローンはTMに対してCLよりも高いaffinityを示した。さらに、これらのMoaCLは臍帯静脈(HUVEC)に反応し、HUVEC表面上に表出しているTMをinternarizationによってdown-regulationを引き起こした。TMは、トロンビンが結合することによって、protein Cの活性化を引き起こし、また、protein Cとprotein Sの複合体を活性化させることによって血管内凝固を防止する作用を有する。以上のことから、本研究では、aCLのうちある特定の病因性を有するaCLは血管内皮上のTMに反応し、1)血管内皮細胞上のTMのdown-regulationを引き起こし、2)血中にトロンビンの遊離を起こし、3) protein C、protein Sの活性化を阻害し、血栓形成を引き起こす機序が示唆された。
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