気管支喘息の最も重要なアレルゲンであるダニ抗原をもちいて、ダニ抗原特異的T細胞株を作成し、機能解析を試みた。昨年、我々は重症患者で樹立したT細胞クローンはすべてTh2型細胞で、IgE抗体の産生をきわめて強く補助したのに対し、減感作療法を実施し、症状の比較的安定した患者より得られたT細胞クローンは、Th2型よりむしらTh0型が多く、稀にTh1型も樹立できることを示した。ここで得られたTh0型細胞はダニ抗原特異的IgE抗体を補助せず、IgG4及びIgG1抗体産生を補助し、Th1型細胞は抗体産生を全く補助することはなかった。このことは、ダニ抗原特異的Th2型細胞をTh0型に変換できれば、気管支喘息の根本治療につながることを示している。そこで、今年度は、このTh2型細胞とTh0、Th1型細胞の刺激伝達の相違を検討し、遺伝子操作を行い刺激伝達のレベルでTh2型細胞をTh0/Th1型に変換できる可能性を検討した。マウスでは、Th2型細胞の活性化はチロシンのリン酸化を介さないことが示されているが、抗CD3抗体を用いてヒトのT細胞株で検討した結果では、Th2型細胞株の活性化にもチロシンのリン酸化が必須であり、ZAP70およびPLC-γのリン酸化がTh0/Th1型細胞と同等に起こっていることが明らかになった。このことからヒトではTCRを介する刺激についてはTh2型細胞とTh0/Th1型細胞の間で差異のないことが明らかとなった。現在第2シグナルから入る刺激伝達系でTh2型細胞とTh0/Th1細胞と差異がないか検討中であり、プレリミナリーであるがリン酸化のレベルで相違を見い出している。
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