研究概要 |
farnesy化阻害剤であるFarnesylamine(FA)を新たに合成し,膵癌細胞とNIH3T3 fibroblastsのras-形質転換細胞(ras-cell)に対する抑制効果を昨年までに報告した.今回はFAと同様にfarnesy化阻害剤である(alpha-hydroxyfarnesyl)phosphonic acid(HFP)の膵癌細胞等に対する効果を検討し,合わせてraf-形質転換細胞(raf-cell)における効果も検討した.また,ヌードマウスにK-Rを移植後,FAを腹腔内投与し腫瘍増殖抑制効果を経時的に観察した. (研究結果) 1)HFPは50μMの濃度で膵癌細胞(PK-1,-8,-9),ras-cellにアポトーシスを誘導した.アポトーシスはアガロース電気泳動によるDNAラダーの検出,細胞をヘキスト33258で染色し蛍光顕微鏡にて観察し,核の凝集,断片化を検出する事で確認した,しかし,HFP100μMの濃度でもNIH3T3にアポトーシスを認めなかった. 2)raf-cellではras-cellより高濃度(FA40μM,HFPでは100μM)でアポトーシスの誘導を観察した. 3)FAによるアポトーシスの誘導時にICE様プロテアーゼである32KDaのCaspase3が活性化され,17KDaの活性型を形成する事が抗Caspase3抗体を用いたWestern Blottingにて確認された. 4)50mg/Kg体重のFAはヌードマウス移植腫瘍に対し有意な増殖抑制効果を示した. 結論,farnesyltransferase阻害剤であるFAおよびHFPは活性型p21rasの脱farnesyl化によりRas-Raf-MAPKのシグナル伝達を抑制し,ICE様プロテアーゼの活性化を介し膵癌細胞およびK-ras形質転換細胞特異的にアポトーシスを誘導した.FAはヌードマウス移植腫瘍の増殖を抑制し,膵癌特異的癌化学療法の可能性が示された.
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