研究概要 |
1細胞表面に存在する受容体との結合能を持たない変異緑膿菌毒素(PE4EKDEL)とHB-EGF、およびHB-EGFのheparin-bindig domain (HB)から構成されたキメラ蛋白HB-EGF-toxin (HB-EGF-PE)およびHB-Toxin (HB-PE)を、すでに筆者らが作製したプラスミドpEMHB4EKを大腸菌(E.Coli BL21)にトランスフェクトした系を用いて作製した。 2HB-EGF-PEは、血管平滑筋細胞、ヒト肝癌細胞(Hep-G2,SK Hep-1)に対して、0.5-5ng/mlという極めて低濃度で殺細胞効果があることを明らかにした。さらに、EGF-binding domainを持たないHB-PEにもこれらの細胞に対して殺細胞効果があることが判明した。この事実は、EGF受容体のみならず、標的細胞上に存在するheparan sulfate proteoglycan (HSPG)との結合のみでキメラ毒素が細胞内にinternalizeされうることを示すとともに、HB-EGF-PEと標的細胞上のHSPGとのinteractionが非常に重要であることを示唆する新しい知見である。 ヒト肝癌細胞に対してHB-EGF-PEが非常に強い殺細胞効果があること、およびこの作用において、標的細胞上のheparan sulfate proteoglycan (HSPG)が重要な役割をになっていることを明らかにすることができたのは、満足すべき成果である考える。今後は、このHSPGの生物学的な役割をより詳細に解析し、癌細胞の浸潤・転移との関連性も含めた研究に発展させる予定である。
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