1.潰瘍性大腸炎長期経過患者の大腸粘膜テロメアは短縮している。 対象として潰瘍性大腸炎17症例(8年以上経過12症例、8年未満5症例)内2例に異型上皮巣が確認されている。対照として大腸癌手術14症例を用いた。内視鏡下生検より得た組織より17例全例緩解期であることを確認した。また同様に非大腸炎症例から採取した粘膜は正常粘膜(非腫瘍)であることが組織的に確認された。以上の31症例の内視鏡下生検より採取した粘膜よりフェノール/クロロフォルム法にて高分子DNAを精製した。このDNAを用いてサザンブロット法にて、粘膜テロメア長を検討したところ、対照14症例ではテロメアの短縮を認めなかった。潰瘍性大腸炎経過8年未満5症例においてもテロメア短縮は認めなかった。潰瘍性大腸炎8年以上12症例では4例テロメア短縮を認めた。またその短縮を認めた4例中2例は異型上皮巣を有する症例であった。Fiser's exact probability testにて長期潰瘍性大腸炎患者の大腸粘膜テロメア短縮は、非大腸炎症例に比較し有為に高率に出現することが確認された。 2.DNA aneuploidyとの関係について DNA aneuploidyについて10症例について検討した。DNA aneuploidyを示した症例は2例で、ともに異型上皮巣を示した症例であった。その他の8例ではDNA aneuploidyは見られなかった。今後さらに症例を増やして検討していく予定である。現在のところDNA aneuploidyとテロメア短縮との関係は不明である。
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