膵臓における熱ショック蛋白質(ストレス蛋白質)の細胞防御機能に関する研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07670558
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 秋田大学
• 研究代表者: 正宗 研 秋田大学, 医学部, 教授 (50004643)
• キーワード: ストレス / Heat Shock Proteins / 膵炎

研究概要

平成8年度に得られた知見は以下の通りである。
1)膵臓におけるHSP60の細胞防御作用について
これまでに、膵臓においては水浸拘束ストレスによりHSP60を特異的に前誘導しておいた場合、セルレイン誘発膵炎の発症を、HSP60の発現量依存性に抑制し得ることを明らかにしてきた。そこで、この細胞防御作用が他の実験膵炎モデルにおいても同様に認められるか否かを明らかにするために、セルレインとは発症機序の異なる、L-アルギニン誘発壊死性膵炎モデルを用いて検討した。温熱ストレスによるHSP72の特異的な前誘導ではL-アルギニン誘発膵炎の発症を抑制することはできなかったが、HSP60を膵において前誘導しておいた場合、L-アルギニン投与後の膵腺房細胞の壊死の程度が、著明に軽減された。
2)膵臓のHSP発現に及ぼす5-HT,TRH投与の影響
膵において、より簡便にHSPを誘導する方法を開発するため、ストレス関連ホルモンである5-HT,TRHの末梢投与を行ったが、HSPを誘導することはできなかった。
これらの結果(主に1))より、当初の予測通り、HSP60の作用部位は膵炎誘発物質の機能の阻害ではなく、様々な非特異的原因で出現する変性蛋白質などを標的とし、分子シャペロンとして機能している可能性が示唆され、今後その標的物質の同定を行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] Okuyama A,Otaka M,Masamune O,et al.: "Expression of a 60-kDa and a 72-kDa heat shock protein in rat pancreas after hyperthermia." J.Gastroenterol.31. 143-145 (1996)
• [文献書誌] Otani S,Otaka M,Masamune O,et al.: "A case of bleeding caused by rectal stone after ureteroileoceco-proctostomy" Dig.Endosc.8. 156-159 (1996)
• [文献書誌] Otaka M,Zeniya A,Masamune O,et al.: "Pre-induction of a 72-kDa heat shock protein prevents HCl-induced gastric mucosal lesion" Gastroenterology. 110. A219- (1996)
• [文献書誌] Fujimori S,Otaka M,Masamune O,et al.: "Effect of pre-induction of 72-kDa heat shock protein on thioacetamide-induced liver injury by heperthermia in rats" Gastroenterology. 110. A1191- (1996)
• [文献書誌] Jin M,Otaka M,Masamune O,et al.: "Effect of pre-induction of heat shock proteins on indomethacininduced small intestinal lesion in rats" J.Gastroenterol.32. 34-39 (1997)
• [文献書誌] Otani S,Otaka M,Masamune O,et al.: "Effect of pre-induction of heat shock proteins on acetic acidinduced colitis in rats" Dig.Dis.Sci.(in press). (1997)