研究概要 |
血管造影でhypervascularを示した2例の肝細胞癌と非腫瘍部肝組織(肝硬変)を検体として,b-FGF, VEGF/VPF, Angiogeninの血管新生因子mRNAの発現を検討した。いずれの血管新生因子mRNAも肝細胞癌組織中に発現が認められた。一方,非腫瘍部肝組織(肝硬変)中には,いずれの血管新生因子mRNAの発現も認められなかった。腫瘍サイズは3-4cmであり,肝細胞癌組織の悪性度はいずれも中分化型であった。血管造影でhypovascularであった2列の肝細胞癌組織と非腫瘍部肝組織(肝硬変)では上記の血管新生因子mRNAの発現は認められなかった。腫瘍サイズは10mmと12mmであり,肝細胞癌組織の悪性度はいずれも高分化型であった。 以上より,血管造影でhypervascularを示した肝細胞癌組織中にb-FGF, VEGF/VPF, Angiogeninの血管新生因子mRNAが発現することを見い出した。しかし,hypovascularであった肝細胞癌組織中にこれらの血管新生因子mRNAの発現も認められなかった。今後,検討が必要となる問題点は以下の如くである。 (1)血管新生因子mRNAの発現が肝細胞癌の増殖過程と如何なる関係にあるのか。すなわち,肝細胞癌がどのサイズになった時に血管新生因子mRNAの発現が認められるか。 (2)hypovascularな肝細胞癌組織中に血管新生因子mRNAの発現は,本当に認められないのか。 これらの問題点を明らかにするために,RT-PCR法を用いたより詳細な検討を追加する予定である。
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