研究概要 |
1)癌患者の抹消血リンパ球(PBL)をCD11b,CD16の二つの抗体を同時に使用する事により初めてCD11b^+細胞をnegative selection出来るようになった。この結果、CD8^+PBLのみならずCD8^-CD11b^+PBLもキラー細胞活性を抑制するサプレッサー細胞活性を持っている事が明らかとなった。サプレッサー機能の発現には接着分子,LFA-1/ICAM-1,CD2/LFA-3,TCR/CD3複合体またはCD8とのcell-cell contactが重要である事が判明した。 2)癌患者のPBLをIL-2単独或いはIL-2プラスIL-12を用いて培養(LAK細胞の誘導)、或いはMLTCを行いその後IL-2単独またはIL-2プラスIL-12を加え培養(CTLの誘導)とするとIL-12を加えた群はLAK活性、CTL活性共に増強された。その抗腫瘍エフェクター細胞のフェノタイプの解析(FACS analysis及びnegative selection)では,LAK活性はCD8^-CD16^+,CD3^-CD56^+細胞、CTL活性はCD8^+CD11b^-細胞が主となる事が判明した。 3)Acanthosis nigricans(悪性表皮腫)を合併した進行胃癌患者の病態像の解析を行った。胃癌原発巣では細胞増殖因子TGFαとそのレセプター,EGFRが存在することを免疫組織学的に明らかにしえた。患者血中のTGFαをELISA法で定量すると、術前144pg/ml(正常値、10-20pg/ml以下)と高値を示し術後1週後では49pg/mlと急激に低下し術後4週までの解析で低値を示した。悪性表皮腫のpapillomatous hyperplasiaを呈した病変部では全層に渡りEGFRの存在が明らかとなった。この事は、胃癌細胞で作られた大量のTGFαは自らの癌細胞の増殖にautocrine的に働いているのみならずendocrine的に遠く離れた臓器(皮膚)の細胞増殖に働いている事が判明した。
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