研究概要 |
1. TGFαトランスジェニックマウスより樹立した肝細胞cell line AML12において、estrogen (実際はestradiol)とandrogen (実際は5α-Androstan-17β-ol-3-one)を0,01〜10μMに濃度を変化させて培養し.培養液中のTGFαをELISAで測定したところ,estradiolにおいてはほぼ変化なく高濃度でむしろ低下したが、androgenでは1μMをpeakに上昇した。 2. TGFαトランスジェニックマウスの血中testosteron濃度は雄雌を問わずコントロールマウスに比べ高値であった.雄において精巣摘出を行うと当然ながらテストテロンは低下したが,デヒドロキシテストステロンペレット(DHT)を3か月おきに補うことにより,テストテロン値は回復した.また体重は有意な変化はないが,肝重量は精巣摘出で低下し,DHTにより無処理のマウスと同等に復した.PCNAの陽性率は精巣摘出により非腫瘍部,腫瘍部共に低下したが,DHTにより無処置マウスと同等に回復した.肝腫瘍発生率は精巣摘出により低下し,DHTによって無処置群と同様またはそれ以上に増加した.現在性ホルモン抑制の意味でLH-RHアナログ剤を投与中で,これが雄の肝癌発症を抑制するか,あるいは雌の肝癌発症を促進するか近日中に結果が出る予定である. 3. 肝酵素であるcytochrome-p450には様々な亜形がありその中には性特異的に発現しているものが存在する。その中のp450-2a-4 (15a-hydroxylase)と2a-5 (coumarin 7-hydroxylase)は本来雌で発現する酵素であるが,TGFαトランスジェニックマウスにおいては両者共に雄でも活性が見られ,2a-5は特に腫瘍部に於て上昇していた.以上より,本マウスにおける肝発癌に性特異的発現をするp450の異常発現が関与している可能性が示唆された.TGFαとこれら酵素の直接の関係をさらに細胞レベルで調べる必要がある.
|