胃電図の解析は形状からのアプローチが多くの筋電図が混入してしまい困難であるため、周波数や振幅の変化からのアプローチに頼らざるを得ない。周波数や振幅の解析にはコンピュータを用いたうえで、EGGをfast Fourier transformation (FFT)による分析が必要であるがこれまでpowerを含めて解折できる良好なソフトがなかったが、今回は初年度にソフトの作成を完了し迅速なデータの処理が可能となった。そのソフトを用いて以下の2点についての結果をえた。 1) 胃粘膜障害が胃運動機能に及ぼす影響については、これまで知られていない。特に急性障害時の報告は皆無である。そこで人工的に胃粘膜障害を引き起こすendoscopic mucosal resection (EMR)を利用して粘膜障害の前後でEGGを測定して検討した。 対象はEMRを施行目的として入院した早期胃癌および胃腺腫の患者10名である。方法はEMRを施行前後(1週間以内)に空腹時及び食事(377Kcal.269g)負荷後に30分間EGGを測定した。high-cut filter 0.1Hz、time constant 3秒の条件で双極誘導にて測定した。 EMR前の空腹時周波数は3.008±0.197cpmで、EMR後は3.237±0.234cpmと有意に増加した。またEMR前の食事負荷後の周波数は3.402±0.218cpm で、EMR後は3.515±0.218cpmと増加傾向はあったが有意差は認めなかった。これらより急性胃粘膜障害は空腹時のEGGの周波数に影響を及ぼすことがわかった。 2) 強皮症の消化管障害の原因について胃の電気活動を測定した。強皮症患者13例の食事負荷前後の胃電図を比較したところ、食前は低振幅、リズム不整な波形になる傾向がみられた。食後には食前同様の波形が継続する症例と、振幅、リズムとも正常に近い状態に変化する症例と二群に分かれたが両群の間には食道内圧測定検査で得られた食道運動障害の有無との関係について一定の傾向は認められなかった。
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