研究概要 |
PSP/reg蛋白については,前年度にEIA法を確立して,その血清,膵液における動態について検討し,また,免疫組織学的に組織における発現も検索したが,さらに,症例を増やして,PSP/reg蛋白値測定の臨床的意義を増補した。 今年度は,主にpancreatitis-associated protein(PAP)について検討をすすめ、以下の成績を得た。1,ヒトの消化器良性疾患,各種消化器癌においてin situ hybridization(ISH)とRT-PCRにより,PAPmRNAの検討を行った。ISH法でPAPmRNAは小腸以外で発現はみられず,胃癌10%(6/60),大腸癌21%(6/28),膵癌20%(1/5)に陽性であった。また,RT-PCR法でも小腸以外に正常組織での発現は認められず,胃癌38%(3/8),大腸癌83%(5/6),膵癌33%(1/3)に陽性であった。これらの癌におけるPAPmRNAの発現は癌細胞の脱分化現象を反映した異所性産生と考えられる。2,ラット自然発症慢性膵炎(WBN/Kob)において4週毎血清と膵組織を採取し,PAPの動態を検討した。組織学的に12週で間質の炎症性変化,腺維化,腺房細胞の脱落などがみられるようになるが、この様な所見の見られない8週で既にPAPmRNAの発現が認められ,明らかな組織学的変化に先行してPAPの発現することが示唆された。また,膵炎に有効といわれている柴胡桂枝湯投与群では,組織学的に膵炎の変化は極く軽度で,PAPmRNAの明らかな発現は認められなかった。以上より,PAPの動態は慢性膵炎の早期発見や治療効果の指標になりえる可能性が示唆される。3,PAPcDNAを組み込んだプラスミッドを大腸菌に導入し,PAPリコンビナント蛋白の作成に成功した。今後,これを免疫原として,モノクローナルおよびポロクローナル抗体を作成し,それを用いたEIA法を開発して,血清および膵液における動態を明らかにする。また,同様に免疫組織学的検討をすすめる予定である。
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