研究概要 |
補体のcold activationは,被検血清を低温で放置すると試験管内で補体のclassical pathwayが活性化され,残存補体による溶血活性が著しく低下する現象である.この現象がC型肝炎ウイルス(HCV)の感染,特にHCV血症と極めて密接に関連することは,Itohらと我々の共同研究で詳細に証明され,前年度の実績報告書にその概要を記した. 今年度はインターフェロン(IFN)治療を行ったC型慢性肝炎症例につき,各種HCV関連マーカーとともに補体のcold activationを経時的に測定し,その臨床的意義を検討した. 1)まずC型慢性肝炎疾患10例と対照の供血者10例につき,採血後直ちに血清分離を行った血清と,同血清を4℃にover night静置した後の血清につき,Itohらの開発したmicrotitration methodにより溶血活性を測定した.C型肝炎10例中9例は4℃ over night保存にて溶血活性は低下し,うち7例では溶血活性は消失し,補体のcold avtivationが証明された.対照群では溶血活性に変化はみられなかった. 2)6ヶ月間のIFN治療を行いその後少なくとも6ヶ月以上経過を観察し得たC型慢性肝炎67例につき,IFN投与前,投与中,投与終了後にHCV関連マーカーとともに,補体のcold avtivationを検索した. (i)IFN投与前67例中56例(86%)で補体のcold avtivationを認めたが,cold avtivationを示す症例と示さない症例の間に有意差はなく,IFN治療効果との関連もみられなかった. (ii)IFN投与前cold activationを示した56例中,IFN投与中ないし治療後にcold activationが消失した16例中14例はIFNのresponderであった.一方cold avtivationが残存した40例中33例はIFNのnon-responderであった.残る7例はcold activationの軽快を認めたが,これらもIFNのresponderであった. (iii)また,補体のcold avtivationの消失は,IFNによるHCV RNAの減少,消失を反映するだけでなく,IFN投与後の長期の予後の予測にも有用であった.
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