研究概要 |
慢性持続型の潰瘍性大腸炎(chronic-continuous type,CC-UC)では、再燃緩解型の潰瘍性大腸炎(relapsing-remitting type,RR-UC)に比較して、難治の経過をとる場合が多い。本研究では、CC-UCとRR-UCにおいて病変の持続による自己および外来抗原の認識の程度に差があるかを明らかにするためにCC-UC、RR-UCの粘膜固有層単核細胞(LPMC)を正常対照と比較検討した。LPMCを分離し、flow cytometryによる解析を行うと、対照群に比較して潰瘍性大腸炎のLPMCではHLA-DR,IL2Rα,IL-2Rβ,TFR,ICAM-1などの活性化マーカー陽性率が高く、更にCC-UCではRR-UCに比較してHLA-DR抗原陽性T細胞比率が高値を示した。LPMCの活性化の指標として培養上清中のsIL-2R値をELISA法で測定すると、活動期潰瘍性大腸炎のLPMCでは対照群に比べてsIL-2R値が高値を示し、特にCC-UCのLPMCではRR-UCに比べて有意に高値を示した。また、上清中に分泌されるsIL-2Rは主にHLA-DR陽性T細胞に由来していた。経過観察の内視鏡下生検組織を用いて検討すると、CC-UCではHLA-DR陽性T細胞比率が高く維持されていたのに対し、RR-UCでは緩解期にはHLA-DR陽性T細胞比率の低下が認められた。LPMCをHLA-DR陽性および陰性T細胞に分離し、RT-PCR法を用いてサイトカインの遺伝子発現を検討したところ、HLA-DR陽性T細胞では、IFN-γ,TNF-α,IL-2RαのmRNAの発現を高度に認めたが、HLA-DR陰性T細胞ではほとんどその発現を認めなかった。IFN-γ,TNF-αなどのサイトカインは大腸上皮にHLA-DR抗原の誘導および細胞障害活性をもたらすことが報告されており、これらのサイトカインの産生が大腸上皮を場とする炎症を継続させ、潰瘍性大腸炎の難治化に関与していると考えられた。
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