研究概要 |
成熟および老齢ラットの初代培養肝細胞における培養4時間目での、EGF受容体の数は、112,000/細胞,kd値はo.4nMと高値であるが、培養20時間目では、成熟肝のKd値は8nM、老齢肝では1.6nMと明らかに差が認められた。一方、生後3日目の新生仔肝細胞の初代培養系では、EGF受容体は低親和性でレセプター数も成熟肝細胞の1/4であることが分かった。オートクリン機構が主体である幼若肝細胞では、EGF受容体は十分に発現していない事が推察される。また、初代培養した肝細胞から、それぞれ肝細胞膜を精製し、膜レベルでbinding assayを行ってみると、培養初期および培養22時間後ともに高親和性であった。すなわち、親和性の変化が起こるのは培養細胞のみである事から、親和性の変化には新しい蛋白の生合成が必要である事がわかった。すなわち、肝細胞がG_0期からG_1期に移行するときに、蛋白の合成が活性化され、その蛋白がEGF受容体と結合することにより、親和性が変化する可能性が考えられる。これらの結果をまとめると、肝切除や低細胞密度培養においては、細胞膜の変化により多数の蛋白が合成または分解するが、その中に、ある種の蛋白がEGF受容体と結合し、その結果、親和性の低下が起こる。また、増殖する細胞のEGFレセプターはこの蛋白と結合しているが、cell-cell contactが正常に戻ると、この蛋白は減少し、親和性が高くなり、分化型への応答性が強く発現すると考えられる。 従って、培養肝細胞系を用い、この親和性を変化させるある種の蛋白を分離、精製すれば、細胞周期や増殖制御の解明に寄与すると考えられるので、現在この蛋白について検討中である。 現在、これらの研究内容は、数編の論文として投稿中あるいは投稿準備中である。
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