加齢による細胞密度依存性による機能発現を検討した結果、(1)グルコース6ーリン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素等のグルココルチコイドによる誘導、コレステロール及びトリグリセリド等の脂肪酸合成能は細胞密度依存性であった。(2)老齢肝細胞は、成熟及び新生仔肝細胞に比較してDNA合成能及びc-mycレベルの発現が低細胞密度培養時に、かつ、加齢とともに強く認められた。しかし、成熟肝細胞の低細胞密度で培養した細胞に、あらかじめ肝細胞表面から分離調整した膜因子を添加すると、高細胞密度培養時と同様な機能を発現する。しかし、この時、老齢ラット肝の膜因子添加ではこの作用が見られなかった。(3)EGF受容体の量的および質的な変化は、培養肝細胞のDNA合成の応答能に関係していることがわかった。また、受容体の数やKd値の変化は。反応温度や蛋白合成能に依存していた。(4)加齢によるEGFの受容体数およびKd値の変化には細胞骨格は関係していなかった。(5)培養肝細胞にホルボールエステルを添加し、PKCを活性化しても、増殖因子が存在していなければ、増殖作用を示さなかった。しかし、ホルボールエステルは高細胞密度の成熟および老齢ラットでDNA合成能を誘導する機構については今後さらに検討する必要がある。(6)初代培養肝細胞のDNA合成能はTGF-βやIL-1βによって強く阻害された。また、これら両因子の作用は、培養細胞密度においては相反的に影響を受けることがわかった。(6)アルツハイマー患者の脊髄液から抽出した蛋白画分(分子量:160-170KDa)を培養肝細胞に添加培養すると、DNA合成能が制御された。今後、さらにこの蛋白を精製して、その性質を明らかにしたいと考えている。
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