研究概要 |
1.培養肝細胞を用いた細胞内Ca^<2+>、ミトコンドリア膜の膜電位の測定と膜障害阻止に関する検討 tert-butyl hydroperoxide(TBHP)の酸化的ストレスによる肝細胞障害メカニズムとして細胞膜の脂質過酸化に依存する機序と、非依存性機序としての細胞質内Ca^<2+>ホメオスターシスの障害が考えられていたが、平成7年度の我々の検討で、以下のことが明らかとなった。すなわち1,2-bis(O-aminophenoxy)ethane-N,N,N',N'-tetraacetic acidacetoxymethylester(BAPTA-AM)により、細胞質内Ca^<2+>をキレートすることにより、細胞外カルシウムイオン濃度とは無関係に、また、細胞膜の脂質過酸化は起こったに拘わらず、肝細胞障害を抑制し得る成績を得た。このとき、Rhodamine 123 uptakeを用いたミトコンドリアの膜電位の検討を行ったが、BAPTA-AM添加による影響は有意なものではなかった。このことは、TBHPによる肝細胞障害は細胞質内カルシウムホメオスターシスの障害に依存する機構が大きいことを示唆している。 2.肝灌流系における酸化的ストレス、Ca^<2+>流入モデルを用いたRedox potentialに関する検討 TBHPによる酸化的ストレスモデルにおいて、サイクロスポリンA(CsA)による障害抑制を明らかとした(現在投稿中)。その機序の検討を行っているが、現在までの成績からは、灌流液の種々のCa^<2+>にかかわらず、肝細胞障害は惹起され、何れもCsAによって抑制されることより、細胞内のCa^<2+>貯蔵部位からのCa^<2+>放出機序の関与を検討するために、現在、細胞内Ca^<2+>枯渇実験並びにモトコンドリアの膜電位の変化の関係を検討中である。
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