1.培養肝細胞を用いた細胞内Ca^<2+>、ミトコンドリア膜の膜電位の測定と障害阻止に関する検討 スーパーオキサイドによる細胞膜の脂質過酸化反応は、細胞外Ca^<2+>濃度の如何にかかわらず、負荷直後から急速に進行した。この経過において、細胞外Ca^<2+>濃度の違いにより細胞質内Ca^<2+>濃度の上昇に差が認められるが、いずれも細胞質内Ca^<2+>濃度は細胞死の前にピークに達していた。細胞内Ca^<2+>をキレートすると、細胞質内Ca^<2+>濃度の上昇が抑制されるとともに、細胞死も明らかに抑制が認められた。そして、この場合の抑制の機序にはミトコンドリア膜ポテンシャルの変化は関係が認められなかった。即ち、スーパーオキサイドによる酸化的ストレスモデルにおいては、ミトコンドリア膜電位の低下とは独立した、細胞質内Ca^<2+>濃度に依存した肝障害機序が存在し、細胞内Ca^<2+>のキレートにより阻止ができることが明かとなった。 2.酸化的ストレスによる肝障害に対するサイクロスポリンAの抑制効果とCa^<2+>の関連-ラット肝灌流実験系を用いた検討- TBHPを用いた酸化的ストレスによる肝潅流実験では、潅流液Ca^<2+>濃度により肝障害の程度が大きく異なり、生理的Ca^<2+>である1.25mMでの障害が最も軽度で、Ca^<2+>freeになっても、2.50mMでも障害が強かった。サイクロスポリンA(CsA)は有意に肝細胞死を抑制したが、その機序としては、ミトコンドリアからのCa^<2+>放出を抑制することにより、細胞内Ca^<2+>ホメオスタシスの破綻をCsAが阻止したことが推測された。しかし、本実験では、Ca^<2+>依存性の機構とCa^<2+>非依存性の機序が同時に存在している可能性が示唆され、in vivoにおけるCsAによる肝障害抑制作用に関しては、未解決の問題を残しており、今後の検討が必要である。
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