研究概要 |
今年度に行った研究によって得られた新たな知見は以下の如くである。 抗CD3抗体とTcell receptor(TCR)のVβ3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,17に対する抗体を用いたflowcytometryにより、この肝炎における肝内浸潤T細胞と脾細胞のTCR-Vβ usageを検討した。肝内浸潤T細胞のうちのVβ4陽性細胞の比率は正常マウスで14.0%、NTxマウスで10.3%、Non-NTx肝炎マウスで19.5%、NTx肝炎マウスで25.8%であり、P. acnes/LPS投与により陽性細胞が増加し、NTx肝炎マウスではさらに高値を示した。一方、他のVβ陽性細胞は明らかな増加を示さなかった。以上のことより、Vβ4陽性T細胞がこの実験肝炎のEffector cellである可能性が示唆された。 次に抗Vβ4抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体による3 color flow cytometryの解析により、NTx肝炎マウスの肝内滲潤細胞で増加しているVβ4陽性細胞はCD4陽性Vβ4陽性細胞の増加がより大きいことがわかった。 またこの肝炎においてγδ-T細胞は脾では割合が増加したが、肝では肝炎により割合が減少したことにより、この肝炎にはγδ-T細胞の関与は少ないと考えられた。 以上のことより、この実験的自己免疫性肝炎のEffector cellはVβ4陽性のαβ-T細胞である可能性が強く、なかでもVβ4陽性CD4陽性T細胞の関与がより強いことが示唆された。 このようにVβ4陽性T細胞がこの実験肝炎のEffector cellである可能性が示唆できたことは多大な収穫であり、抗Vβ4抗体投与による特異的治療法の開発に大きく近づいたと言える。
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