我々はB型肝炎ウイルスがHepa dnaウイルスに属し、仲間としてアヒルなどいくつかの肝炎ウイルスを有することを利用し、B型肝炎ウイルス上に存在する肝細胞への結合構造を三次元モデリングを用いて解析した。その結果を基に、肝細胞膜上に存在すると想定されるB型肝炎の感染レセプターの単離を試み、得られた約40KDの単一蛋白に対する抗体を用いたflowcytometryによりこの蛋白が肝細胞膜上に存在することを証明し、さらに一部のアミノ酸配列をも解明することに成功した。ホモロジー検索の結果から、この蛋白質は細胞質に存在する既知のいくつかの蛋白質と共にfamilyを形成することが想定されたが、ホモロジーを有する蛋白で細胞膜上に存在するものは未だ知られていない。解明された一部のアミノ酸配列とfamily蛋白のconsensus sequenceを基にこの蛋白のcDNAのクローニングを試みた結果、7個の独立したクローンが得られた。この内の5個は予想通り細胞質に局在する既知の蛋白あるいはこれらと極めてhomologyの高い蛋白であった。しかし、残り2個のクローンの塩基配列は上記のクローンと異なり、その内の1個の局在は核内であった。今後、我々は約40KDの単一蛋白の精製をさらに進めて肝細胞膜上に局在する蛋白のクローニングを進めると共に、肝発癌の観点から核内に局在することが新たに明らかとなった分子についてもクローニングを行う予定である。
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