メバロン酸代謝産物は、Ras蛋白活性化などを介して細胞増殖に強く関与しており、メバロン酸合成の律速酵素であるHMG-CoA reductase阻害剤は正常細胞や癌細胞の増殖抑制に働くと考えられる。 平成7年度、HMG-CoA reductase阻害剤の癌細胞増殖抑制効果を4種の肝癌細胞株により示した。HMG-CoA reductase阻害剤として、肝細胞内への輸送にanion transporterが必要とされているpravastatinと、非特異的に細胞内へ輸送されるsimvastatinを用いた。その結果、simvastatinに濃度依存的癌細胞増殖抑制効果を認め、pravastatinには抑制効果を認めず、癌化した肝細胞には輸送機構の発現が不十分であるためと考えられた。 平成8年度、癌細胞では生じていることが予想される細胞内代謝過程の様々な変異の影響を除くために、正常培養肝細胞を用い同様の検討を行った。その結果、pravastatinは肝細胞のDNA合成を抑制し、肝細胞にapoptosisの誘導を亢進させた。 HMG-CoA reductase阻害剤のこれらの効果はメバロン酸の同時投与により消失したが、iso-pentenyl adenineやfarnesolの同時投与では消失しなかった。このことより、HMG-CoA reductase阻害剤の効果は、Ras蛋白のprenylation(farnesylation)抑制以外の機序によることも考えられ、今年度はgeranylgeranylationを受けるRhoファミリーの役割についても検討を加えた。HMG-CoA reductase阻害剤により増殖を抑制した肝癌細胞に、liposomeに組み込んだgeranyl-garanyolを添加することにより抑制効果をキャンセルする事が示され、geranylgeranylationの重要性が示された。
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