研究概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)の病因には自己免疫機序の関与が想定されている。我々はこれまで、活動期UC患者血清中に存在する自己抗体はHLA-DPw9分子を介して細胞表面に表出するトロポミオシン(TM)ペプチドを認識することを報告した。本研究ではHLA-DPw9分子にassociateするTMペプチドの解析を目的とした。(1)抗原ペプチドのcandidateを得るためMPsrch dataによるHomology searchを行った結果、TMペプチドの一部(HIAEDADRK)がエビアレルギー患者IgE binding epitopeと88.9%のhomologyのあることが明らかになった。(2)このペプチドに対する抗体の検討のため、新たに合成ペプチド(HIAEDADRK)を固相化抗原としたELISAを作成しスクリーニングを行った結果、UC(OD=1.23±0.40)で健常人(OD=0.40±0.10),クローン病(CD)(OD=0.52±0.21)に比較し有意に高い血清抗体の存在を確認した。(3)合成ペプチドに対する高い抗体価を有するUC血清を用いてHLA-DPw9遺伝子導入マウス線維芽細胞(L cell)を標的細胞として^<51>Cr release assayで抗体依存性細胞障害(ADCC)活性を測定したところ,本血清(% Cytotoxicity=15.4±6.5%)は対照とした健常人血清(4.11±0.52%)に比較し有意に高いADCC活性を示した。またこのADCC活性はUC血清を合成ペプチドとpreincubationすることで有意に低下した(p<0.05)。以上の結果から、合成ペプチド(HIAEDADRK)はUC患者血清中のADCC活性を有する自己抗体の認識するepitopeとなっており、HLAにassociateするペプチドのcandidateの一つと推測された。
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