研究概要 |
分離肝細胞において,vasopressin添加によりイノシトール三リン酸(InsP3),細胞内Ca^<2+>([Ca^<2+>]c)は濃度依存性に上昇した.肝灌流実験においてvasopressin注入により一過性に胆汁流量が増加した後,著明に胆汁流量が低下し,胆汁うっ滞を来した.horseradish peroxidase(HRP)のshort pulse load後の胆汁中へのFRPの排泄はvasopressinにより,濃度依存性に増加した.つまり,[Ca^<2+>]cの上昇により胆汁うっ滞を来すが,vesicle transportは亢進することが示された. cAMPアナログで前処置することによりprotein kinase Aを活性化すると,vasopressinによる[Ca^<2+>]c上昇は明らかに増強された.また,cAMPアナログは胆汁流量を増加させるが,vasopressinによる一過性の胆汁流量の増加,それに続く胆汁流量の低下を明らかに増強させた.また,[Ca^<2+>]c,胆汁流量に影響を及ぼさない低濃度のvasopressin(10pM)添加においても,cAMPアナログ前処置により[Ca^<2+>]c上昇,胆汁流量の低下が認められ,[Ca^<2+>]cの上昇と胆汁うっ滞の密接な関係が示された.しかし,タウロウルソデオキシコール酸(TUDC)とcAMPアナログの併用により,vasopressinによる[Ca^<2+>]c上昇,胆汁うっ滞に対するcAMPの増強効果は相殺された.さらに,TUDCがグルカゴンによるprotein kinase A活性を抑制したことより,TUDCはprotein kinase A阻害剤として作用することが示唆された.
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