(1)モノクローナル抗体の作成:ヒト胃粘膜アポムチンを抗原としてマウスモノクローナル抗体SO-MU1(IgG)を作成した。 (2)SO-MU1対応抗原の遺伝子クローニング:λgt11ヒト胃cDNA発現ライブラリーをSO-MU1でスクリーニングし、1095塩基の遺伝子断片をクローニングした。この遺伝子断片はアポムチンMUC5ACに特異的な24塩基の繰り返し配列を含んでいた。この結果からSO-MU1の対応抗原はMUC5ACであると結論した。SO-MU1はMUC5ACに対する唯一のモノクローナル抗体である。 (3)SO-MU1の組織抗原認識能:SO-MU1は凍結切片上の組織抗原を認識した。ホルマリン固定組織はマイクロ波処理後に初めて免疫染色可能となった。SO-MU1対応抗原の分布はMUC5ACの繰り返し配列領域に対する抗体を用いて報告されているMUC5ACの組織分布より広く、アポムチンのグリコシレーションがSO-MU1の反応性に大きくは影響しないことを示唆していた。 (4)正常消化管組織におけるMUC5ACの発現:胃粘膜上皮細胞細胞質、壁細胞分泌小管、小腸吸収細胞刷子縁、胆管・胆嚢上皮細胞にMUC5ACの発現を認めた。大腸粘膜上皮細胞、肝実質細胞、膵菅上皮細胞、膵実質細胞には発現がなかった。 (5)消化器疾患におけるMUC5ACの発現:胃の腸上皮化生、大腸アデノーマの杯細胞の分泌小胞内にMUC5ACの発現を認めた(正常小腸、大腸の杯細胞には発現を認めない)。胃の腸上皮化生の吸収細胞には正常小腸細胞と同様の発現を認めたが、大腸アデノーマの吸収細胞には発現を認めなかった。胃癌では組織型に関連したMUC5ACの発現が認められた。大腸癌では発現を認めなかった。膵癌ではMUC5ACの発現を高率に認めた。
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