1)ヒト胃粘膜由来のアポムチンを抗原としてモノクローナル抗体SO-01、02、03を樹立した。今回の研究にはSO-01を用いた。 2)ヒト胃発現cDNAライブラリーをSO-01でスクリーニングし1095bpの遺伝子断片m-8をクローニングした。m-8はMUC5ACに特異的な24塩基の繰り返し配列を含んでいた。SO-01はMUC5ACを認識する初めてのモノクローナル抗体であった。 3)MUC5ACは正常胃表面上皮細胞、壁細胞、小腸上皮細胞、胆管上皮細胞に発現が見られたが大腸上皮細胞、肝実質細胞、膵では発現が見られなかった。SO-MU1を用いて得られたMUC5ACの分布は繰り返し配列領域に対するポリクローナルを用いて得られたこれまでの結果と一部異なっていた。SO-MU1はムチンの糖化に影響され難いエピトープを認識していると考えた。 4)化生胃粘膜上皮細胞、大腸ポリ-プの杯細胞でMUC5ACの発現が見られた。胃癌では組織型に依存した発現が見られた。大腸癌では発現を認めなかった。膵癌、特によく分化した膵癌ではMUC5ACの発現が高率に見られた。これらの結果からアポ蛋白の発現異常が細胞の分化異常で見られる糖鎖抗原異常の発現機序の一つであると推測できた。 5)予備実験でMUC5ACが膵癌患者血中のシアリルルイスA糖鎖抗原のキャリアー蛋白であるが胃癌、大腸癌患者のシアリルルイスA糖鎖抗原のキャリアーはMUC5AC以外の糖蛋白質であることが示唆された。アポ蛋白の測定により糖鎖腫瘍マーカーの診断精度を上げ得ると考えられた。
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