研究概要 |
ラット胃粘液の主成分であるムチンは粘膜上皮に存在する複数種の細胞によって合成分泌されるが、産生されるムチンは細胞種ごとに化学的性質ばかりでなく、それらの合成分泌の制御機構も異なると考えられている。胃粘膜の生理や病態に深く関与しているムチンの代謝制御機構を明らかにするためには、これらの性質の異なったムチンを識別し、定量できる方法が必要である。このような観点に立って特定のムチンを認識するモノクローナル抗体の開発とその応用の可能性を検討し、以下のような結果を得た。 1)ラット胃ムチンを免疫原として得られた抗体(RGMシリーズ抗体)のエピトープに関する検討を続けた。胃表層細胞由来のムチンに対する抗体であるRGM11,21およびRGM24のエピトープ検索の結果、染色領域は類似しているが11,21はムチン由来のオリゴ糖と反応するが、24はムチンを分解すると反応性が失われた。RGM11,21のエピトープ構造の解析は現在継続中である。 2)新たに、ヒト大腸ムチンを免疫原としたモノクローナル抗体(HCMシリーズ抗体)を14種類確立し、その性状について調べた。これらのうち8種類は抗原ムチンをシアリダーゼ処理するすると反応性が無くなることからシアル酸をエピトープの一部に含むことがわかった。またこれらの中にはヒト胃粘膜腸上皮化生部に特異的に反応するものもみられた。 3)サンドイッチELISA法を用いたムチン測定法開発を試み、同一ラット胃粘膜試料中に含まれる、HIK1083と反応する粘膜深部ムチンと、RGM11と反応する表層部ムチンを個別に測定する方法をほぼ確立した。現在、実験潰瘍作成胃より得られた各種ムチン標品にこの方法を適用し、妥当性を検討している段階にある。
|