研究概要 |
本申請の研究費補助金交付が平成7年10月に内定したため、本研究は若干の遅れをもってスタートしたが、初年度(平成7年度)はアルコール性肝障害患者赤血球容積の増大とmembrane fluidityの低下に基ずく膜変形能の低下を確認し、これが狭少化傾向を示す類洞において、組織レベルでの低酸素状態を慢性的に惹起し、細胞障害を助長する可能性を報告した。実験的研究は、環境整備と予備実験にそのほとんどを費やした。2年目は実験的研究を本格的に開始し、ラットEtOH持続注入モデルを用い、肝微小循環障害と酸素消費の観点から、生理学的、形態学的に検討した。EtOH投与時の肝微小循環および酸素消費には濃度により異なる反応性が存在し、低濃度で早期の血流低下からの回復もたらす血流保持機構が存在することが見出された。また10%以上の濃度では30分以後組織レベルでのうつ血が発生し、酸素消費も低下する傾向にあると考えられた。臨床的研究では、アルコール性肝障害の進行に伴い患者血液において平均血小板容積の増大、血小板凝集能の亢進が認められるとともに、膜脂肪酸組成変化により、血栓形成促進傾向にあると考えられた。これらの結果は、1995.8.第30回日本アルコール医学会、1996.2.第16回アルコール医学生物学研究会、1997.2.第22回日本微小循環学会にて口頭発表し、アルコールと医学生物学Vol15,pp92-97,1995、Alcoholism 20(1):56-59,1996において誌上発表した。
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