研究概要 |
モルモット単離壁細胞の実験系を用いて以下の研究成果を得た。 1.壁細胞の酸分泌機構にσ受容体を介する経路が存在し、酸分泌刺激効果に関連していること、またこの経路のsecond messengerはcalcium ionであることを示唆する成績を得た。 2.壁細胞にPAF(platelet activating factor)の受容体が存在し、酸分泌刺激作用に関係していること、またその機序はcalcium ionを介していることを示唆する成績を得た。 3.慢性胃炎,消火性潰瘍等への関連性が注目されているHelicobacter pyloriの産生する毒素であるvacuolating toxin(VT)が壁細胞に対する直接作用を示すこと、またその機序はsecond messengerに対する作用を介するものではないこと示唆する成績を得た。 4.局所麻酔薬であるprocaineとoxethazaineの壁細胞に対する直接作用を検討した結果、前者はcholine作動薬であるカルバコールに類似した刺激効果を示し、後者は非競合的にmuscarine受容体とは無関係な機序によって抑制効果を示すという成績を得、両者の局所麻酔薬としてのpotencyの差(後者は前者の4000倍のpotency)、構造式の差などが関係していることが推測された。 5.壁細胞に存在するprotein kinase C(PKC)のサブタイプを検討した結果、壁細胞にはα,γ,ζの3分子種が存在すること、そしてこのうちαとγが酸分泌に関与していることを示唆する成績を得た。
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