研究概要 |
昨年度多剤薬剤耐性に関連するP-glycoprotein が胆汁分泌機能に関与することを免疫組織化学的に明らかにしたが、平成8年度はP-glycoprotein(mdr1,2)の分子生物学的解析に重点をおいて研究を行った。正常および肝内胆汁うっ滞時でのmdr1,2、さらにcanalicular membrane organic anion transporter(cMOAT)の発現をmRNAレベルで検討した。 ラット肝組織よりRNAの抽出し、特異的なプライマーを用いてcDNAにした後RT-PCRを行った。それぞれのプライマーはイントロン配列を含み,各geneで塩基配列の違いが大きい部位に設定した。クローニング後塩基配列を確認、mdr1b、mdr2、cMOATに特異的なプローブを作製した。RT-PCR産物におけるSouthern blottingおよびNorthern blottingによりmRNAの発現を検討した。胆汁うっ滞モデルとして、総胆管の結紮による閉寒性黄疸ラットを用いた。Northern blottingでは明瞭なシグナルとしてmRNAを検出できなかったが、RT-PCR産物のSouthern blottingにより、mdr1b、mdr2、cMOAT mRmの発現はコントロールラットで弱く認められた。総胆管結紮後、結紮1、3、7日のいずれもmdr2 mRNAの発現誘導がみられ、経時的に発現は増強していた。mdr1bのmRNAも総胆管結紮後同様に発現の増強が観察された。一方、cMOAT mRNAの発現は総胆管結紮による胆汁うっ滞時には増強されず、mdrとは異なる統御を受けていることが示唆された。 昨年度行ったP-glycoproteinの免疫組織化学所見を考え合わせると、総胆管結紮による胆汁うっ滞時おいて、mdr1と同様にmdr2の発現誘導がmRNAおよび蛋白レベルで明らかにされ、胆汁分泌機構におけるmdr2の機能的意義の一面が解明された。
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