研究概要 |
平成7年度は各種胆汁うっ滞時のP-glycoproteinの局在を光顕、電顕的に観察し、胆汁うっ滞時におけるP-glycoproteinの機能的意義を検討した。P-glycoprotein(mdr1,2)モノクロナール抗体を用いた酵素抗体間接法により、正常ではP-glycoproteinは毛細胆管に一致してpolygonal patternの局在を示し、電顕的にはペルオキシダーゼ陽性産物が毛細胆管膜上に観察された。cytochalasin B(CB)、lithocholic acid(LCA)をラット肝に注入すると胆汁流量が減少し肝内胆汁うっ滞が惹起され、毛細胆管上のP-glycoprotein活性は滅弱した。培養肝細胞coupletsにCB、LCAを添加すると、毛細胆管の拡張とともに毛細胆管の収縮は著明に障害され、P-glycoprotein活性も低下した。総胆管結紮による閉塞性黄疸時では、結紮1、3日後毛細胆管上のP-glycoprotein活性は増強し、7日後に低下した。 平成8年度は正常および総胆管結紮による胆汁うっ滞時でのmdr1,2とcanalicular membrane organic anion transporter(cMOAT)の発現をmRNAレベルで検討した。ラット肝組織よりRNAの抽出し、特異的なプライマーを用いてcDNAにした後RT-PCRを行った。クローニング後塩基配列を確認、mdr1b、mdr2、cMOATに特異的なプローブを作製し、RT-PCR産物におけるSouthern blottingによりmRNAの発現を検討した。mdr1b、mdr2、cMOAT mRNAの発現はコントロールラットで弱く認められ、総胆管結紮1、3、7日後でいずれもmdr1b,mdr2 mRNAの発現誘導がみられ、経時的に発現は増強していた。以上より、総胆管結紮による胆汁うっ滞時おいて、mdr1と同様にmdr2の発現誘導がmRNAおよび蛋白レベルで明らかにされ、胆汁分泌機構におけるmdr2の機能的意義の一面が解明された。
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