大腸腫瘍患者の糞便と腫瘍組織からMutant-Allele-Specific Amplification(MASA)を用いてK-ras遺伝子の点突然変異を解析した。[対象]腫瘍径10mm以上の大腸腺腫患者10例(男性8例、女性2例、平均年齢62.7歳)、大腸癌患者40例(男性22例、女性18例、平均年齢62.2歳)、正常対照者10例(男性5例、女性5例、平均年齢51歳)[方法]1)糞便からのDNAの調整:-80℃で凍結保存した大腸癌患者の糞便50mgをSDS、proteinase K処理後、phenol/chroloform法で抽出し、界面活性剤CTABで処理、DNAを抽出した。2)腫瘍組織からのDNAの調整;切除標本のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックから病変部の10μm切片を作成し、phenol/chroloform法でDNAを抽出した。3)PCR:polymerase-chain reaction(PCR)法を用いて、K-ras codon 12におけるpoint-mutationの有無をMutant-Allele-Specific Amplification(MASA)法で確認した。まず、codon 12を中ほどにした遺伝子断片を増幅することを目的として作成したprimerを用いてPCRを行い、次にcodon 12のpoint-mutationが存在する部位にアニールする様作成したprimerを用いてPCRを行い、エチジウムブロマイドを含む3%アガロースゲルで電気泳動し、増幅された切片のbandを観察した。[成績]大腸癌患者の25%(10/40)、大腸腺腫の30%(3/10)で糞便中に変異が検出された。腫瘍組織に変異を認めた症例における糞便中変異検出率は、大腸癌で71.4%(10/14)、大腸腺腫で100%(3/3)であった。検出率を占拠部位、腫瘍径別にみると、有意差は認めないが遠位大腸の癌、小さな癌で低かった。[結語〕糞便中における癌関連遺伝子異常の解析は、大腸癌診断の一検査法となる可能性が示唆された。
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